看護婦さんの勤めている特養の職員も、よく工夫していて、本人がよほど嫌がらない限りは、グループ活動に出てもらったり、好物を買ってきたりしているらしいのだが、それでも食べないときは、頑として食べないという。
「困ったねえ。とにかく、いろいろやってみるより他にないよね」
なんていう、いつもの如くの結論になりかけたころ、ある寮母さんがこう言うのです。
「食べなきゃ食べなくてもいいんじゃないんですか」と。
一瞬、私たちは顔を見合わせ、そして思わず笑った。
そういえばそうではないか。
私たちは、みんな真面目な職員だから(?)、どうやって食べてもらおうかという方法論ばかりに熱中していて、"ご飯は三度三度ちゃんと食べるもの"という前提は疑わずにいたのです。
その結果、方法論はどんどん姑息ともいうような話になって、例えば、スプーンでどうやって口を開かせるかなんていう、狭い領域にどんどん入りこんでいってしまうのです。
そこに、この寮母さんの発言があったものだから、みんな、ハッとするとともに、救われたような気になったのだ。